復刻前
復刻後
約120年前、1900年頃に製造された「リアルヴィンテージ」の鼻眼鏡「フィンチ」
めがねとして存在するその長き年月により フレームは腐食 黒ずみ、鼻当ては朽ちて欠損、それは博物館に展示されるほどの逸品が届きました (めがねミュージアムでは、ほぼ同じものが展示されています)
今回のご依頼は、そんなヴィンテージ フィンチの時を戻す「リニューアル」メッキと鼻当て復刻のご依頼です
聞けばこちらのご依頼主様、ショップを歩き断られ、最後に教えてもらったのが「ここに聞いてみたら」との事
続けて「ここが無理だというなら鯖江のどこもダメだよ」とも教わったそう
そんな背景を伺うと身も引き締まる思いです
仕事柄 過去様々なめがねに触れてきましたが、これほどのヴィンテージに携われるのは、私にとって貴重な経験です
当店で出来る限りをご説明、ご依頼の流れとなりました
しかし、よく120年もの間その形を残し、人の手を渡り歩いてきたものです
朽ちてはいるものの、ちゃんとめがねとして機能しているから驚きです
いざ加工を進めると、ブリッジ金具を止めるネジが全て腐り、4か所ネジ抜きからのスタート
えっ、マジ⁈とはならず、ある程度想定済みでした
大昔のフレームの為、パーツも全て小さく替えが無い為、全ての作業が慎重になります
(ネジ抜き後、新規ネジはマイナスネジを加工し、小さく合うものに)
驚いたのは、朽ちた鼻当てを止める為のピンが細く短い=作るのにかなりの労力が必要、です
まるで懐中時計の中身をバラすような、ここまで繊細な作業はある意味新鮮
そして全てのメタルパーツをバラシ終え、そのひとつひとつを手作業で丁寧に処理していきます
細かい隙間まで丁寧に 腐食やくすみを取り除き、バフで丁寧にキズを落としツヤを戻します
磨きで表面を整えたらメッキ加工を施し、現代に蘇るシルバー輝く仕上がりとなりました
核心の鼻当てづくり、細かいパーツに最適なCNCの出番ですが、一筋縄ではいきません
これほど薄く細いパーツ、機械も道具もそれ専用のもの+知識・経験を要しました
知識・経験がまだまだの私、トライ&エラーを何度も繰り返し、ようやくものにできるパーツの原型に
当初から「元の鼻当ては滑る」とお聞きしており、溝の間隔・深さも見直し製作にあたりました
もちろん角もラウンドフォルムにし 痛くないよう整え、細部に渡り装着感にもこだわりを持ちます
その薄く細い鼻当てパーツを慎重に指先でつまみながら磨き上げ、肝心の取り付け工程へ
鼻当てを止める為 過去最少「極小ピン」を余分に作成し、取り付ける大きさに2次加工後、封入していきます
6ヵ所封入後は、頭部分を樹脂で覆い 脱落防止を終え、全てを組み立て遂に完成しました
完成品は120年の時を感じさせない、恰好はレトロだけど 質感は真新しいめがねへと生まれ変わりました
結果、「修理も完成度の高さに驚いております」とお喜びのお言葉を後日頂き、やりがいと嬉しさが溢れます
ご依頼主様、今回は大変貴重な仕事に携わらせて頂き、本当にありがとうございました
この先も末永く歴史を刻めるよう、大切にお取り扱いください
そして調子が悪くなったら またいつでもご相談ください
※特殊なめがねでおこまりの方はこちら
復刻費用 | 永き時を超え 現代に復刻 |
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期間 | 約 9週間 |
鼻当てボロボロ
素材もボロボロ
寸法 3㎜×25㎜
厚み 1.4㎜
溝幅 0.5㎜
鼻止めピン取付
寸法 0.6㎜×1.2㎜
全て取り付け完成
今後120年を生きる為
新たに蘇った瞬間