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今回は、たまたま見掛けた「縮みに対する対策とサービス」を行う「流石一流ブランド」とうなずく手法をご紹介します
そのブランドはこちら、画像のターコイズブルーが綺麗な「フェラガモ」です
一体どんな手法がとられているのか、どの様な利点に繋がるのか、分かりやすく解説してきます
某一流ブランド
テンプルをたたむと
芯が断面より一段低い
芯に色まで塗ってある!
セルロイド・アセテートで出来ためがねフレームは経年や温度環境で少しづつ縮んでいきます
縮みが進行した場合、一番症状が分かりやすい部分、それはテンプルを折り畳んだ時に見える断面部になります
実際に縮みが進行した場合、どのような症状が起きるかというと、テンプルの中芯が飛び出してきます
この症状を解説すると、プラスチック樹脂がテンプル芯を「細長い袋状」に包み込むように作られており、プラスチック樹脂は膨らんだゴム風船のようなイメージになっています
空気の注ぎ口(唯一の出入口)がその断面部にあたる為、縮んで袋状の周りがしぼんで来た時、中にある芯は1ヶ所しかない出入口方向に押される、という仕組みから飛び出してくるわけです ※金属芯が飛び出した画像の特集はこちら
めがねの製造工程でテンプルを作る際は、細長い短冊状の生地の中にテンプル芯をサンドイッチ状に挟み込んで溶着します
この溶着された板状の生地を削り出し、少しづつテンプルの形状にしてきますが、合わせ目の断面はまだ加工しません
一般販売されるフレームは、工程の終盤でテンプルの開き角度を刃物でカットして合わせる為、その時点まで少し長い状態のままなのです
このような工程を見て行けば、テンプルの合わせ目断面はスパッと切断されており、よく見ると刃物痕が残っている事が理解できます
少し手の込んだフレームならば、その後 断面部の金属表面に再度刃物工具で削りを入れ、少し窪ませ縮みによる芯の飛び出し対策を行っています
この、「金属を窪ませる対策」は過去に何度も見たことがありました
今回のフェラガモは、中の金属芯が一段低くなっており、経年による芯の飛び出しを想定し、製造方法を変えています
これはきちんと計算された長さに芯も生地もカットし、フレーム製造の終盤工程で開き合わせをしているという事が伺えます
ここまではその他ブランドでも出来る事ではないかと想像出来ますが、こちらのフェラガモは更にもう一手間をかけています
ナント、金属芯の断面部にターコイズブルーの色を付けているではありませんか!
さすがに私もこの手法は初めて見ました、明らかに溶着前段階で色を塗っています(もしくは溶着後に色を付けている?)
これを行う事で、完成品の見た目・腐食防止・芯飛び出し時の違和感など、様々なデメリットを防ぎます
普段 表側からは全く見えない部分にここまで手を掛ける、そのブランドがこのフレームに込めた思いが伝わります
言葉で簡潔に表せば、テンプル芯を通常より短くし先端部分に同色を塗った、という事に過ぎませんが、これを実際行う為にはいくつもの工程を増やし手間をかける、その先に待つお客様の為に、という素晴らしい姿勢が見えます
普段目にする「表面のデザインやオーナメントを工夫する」とは全く違った視点でのサービス、めがねにはまだまだお客様へのサービスに繋がるものがあると考え気付かせてもらえます
当店も、この様な素晴らしいサービスを取り入れなくては、と考えるきっかけにもなりました
いかがでしたか?
今回は、縮み対策から見える高級ブランドの姿勢「フェラガモ」をご紹介しました
今後も「ひと味違った視点」でめがねの素晴らしさなどをお伝えしていきます
どうぞご期待ください